儲からない見積(3)~工数×単価では見積もれないもの

気分の乗ってるうちに、シリーズ第三弾。[→(1)、→(2)]
普通に考えれば、売上が仕入+経費より十分に多ければ、儲かるはずです。特別な事情がなければ、仕入より安く売るはずは無いので、儲からないのは経費が予定以上となる場合。
コンピュータシステムの開発を受託する場合、経費のほとんどは、システム開発要員の労務費および外注費です(外注費は経費ではなく仕入として扱う場合もあります)。システム開発の工数から見積もった金額が、労務費+外注費より十分に大きければ、儲けは出るはずです。
ハードウェア、既成のソフトウェア、ネットワークなどを、システムと併せて納入する様な仕事の場合、仕入金額との差額で儲けを出すことも出来ますが、今回は別枠で考えることにします。そもそも、納品する品物のメーカーやベンダーでもなければ、この部分の儲けはほとんどありません。
システム開発の工数を適切に見積もって、お客様が納得し、且つ、損をしない単価を工数にかけて、見積金額を出したとします。ここで、開発工数の実績が、見積りを大きく上回らなければ、そこそこ儲けが出るはずなのです。
しかし、それでも儲からないのは、その他の経費の見積りが甘いからです。


当然のことですが、システムの開発には、開発要員の労務費と外注費以外に、様々な経費がかかります。もちろん、一般的な経費については、それを考慮した上で、お客様に提示する単価が決められているはずです。
・打合せや作業に必要な旅費交通費(深夜帰宅のタクシー代も?)
・用紙、メディア、筆記具、ファイリング用品などの消耗品
・電話、郵便、宅配便などの通信費あるいは運賃
・開発要員の作業場所の地代家賃、および、光熱費
・開発要員のPC等、作業環境の費用
etc.
これらの経費が、内外の単価の差額で吸収できる範囲に収まっていればいいのですが、明らかに金額が大きくなりそうなら、見積に入れるべきなのです。
私の経験から、具体的な例を挙げてみましょう。
1.お客様の事務所は自社の近所だが、システムの対象となる業務の現場(工場や営業所)が全国に散らばっており、ヒアリングや教育、納品等のために旅費交通費がかさんだ。
→事前にわかっていれば見積に入れておくべきです。もし、事前にわからないのであれば、見積条件に、次の様に記述しておく方が良いでしょう。
「業務遂行のため、御社事務所以外の場所に訪問の必要がある場合、別途旅費交通費を請求させて頂く場合があります。」
見積り時に遠隔地への出張を想定しておらず、お客様との交渉でも旅費交通費の実費負担をして頂けない事になった結果、いくつかの現場でのヒアリングにSEが同行しなかったという経験があります。当然、現場を考慮した良いシステムは作れません。
2.システムのマニュアルについて、必要部数全てを印刷製本して納品することを要求され、印刷費、ファイリング資材等のコストがかさんだ。
→納品するドキュメントについては、部数や形態を見積り段階で決めておきたいですね。
今時、ドキュメントの納品は出来るだけ電子媒体にしたいです。印刷して納品するとなると、とにかく手間がかかりますし、納品直前にプリンタが不調になったりして、意味不明の残業をしたりすることになります。
3.開発要員が一箇所に集まって作業する場所が無く、別途、プロジェクトルームを借りる必要があった。
→本当に、事務室を借りることになったら、かなりのコストです。自社にスペースが無い場合は、お客様に会議室等のスペースを提供してもらえる様、交渉したいですね。一応、見積りに入れておいて、値引き条件にするとか。もちろん、用意された部屋の環境が劣悪だったりすると、メンバーに恨まれますが。
私のいた職場には、総務にコネがあるのか、交渉が上手いのか、何か事が始まると半年ぐらい共用会議室を借り切ってしまう課長さんがいました。こういう人の下にいると助かりますが、別の部署には迷惑です。
4.スケジュールの都合で、開発要員を増やしたが、開発環境のPCが足りない。
→これはとてもよくあるケースです。PCのレンタルやリースの代金が見積に入っていればいいのですが、予定外の増員となると、そうも行きません。
どこから調達してきたのか、CPU性能が現行機の3分の1も無いものをあてがわれたこともあります。外注先を探す際に「開発用PCの持参をお願いします」とかの条件を付けるのはよくあることです。
計画の範囲の増員であれば、私の職場では、よくレンタルを利用していました。でも、PCだけ借りれば済むものではないです。レンタルしたPCの台数だけ、必要なソフトのライセンス購入を申請したところ「予算が無いからコピーできないか?」とかとんでもない事を平気で言う上司がいました。PCの台数分だけ必要なソフトのライセンス料を見積もっていないとなると、組織的に違法コピーをしているととられる可能性もあるでしょう。注意したいですね。
工数も経費もちゃんと儲かる見積りをして、打ち上げでちょっと贅沢出来たら嬉しいですね。
ソフトのライセンス料ケチって、飲食代を捻出する様な管理職と同席するのはご遠慮したいですが。