データだけでは使えません

poor SEが個人で営んでいる仕事の中に、フロッピーディスクの変換という作業を請負うものがあります。
(うちの仕事場にはたくさんありますが、)最近はほとんど見かけることのなくなった5インチのFDや、ワープロ専用機のFDを預かり、記録内容をWindowsやMacOSで扱えるメディアにコピーあるいは変換して、依頼主に送り返すものです。
今月も2件の依頼がありましたが、どちらの依頼も、FDの記録内容をWindowsで扱えるメディアに単純コピーするだけで片付くものではなく、なかなか難しいことになってしまいました。


1つの依頼は、N88-BASICフォーマットの5インチFDから、ファイルを抜き出して、Windows環境で扱える様にしたいというものでした。
元のFDがN88-BASIC用(≠MS-DOS用)ということで、ファイルの単純コピーはできません。PC-98用のMS-DOSに付属の、FILECONV.EXEを使った変換作業が必要になります。
さらに、依頼主が期待していたのは、FDに入った顧客管理のデータをWindows環境で閲覧可能にする、という成果でした。
しかし、変換元のFDに入っていた顧客管理データと互換のあるWindows用のソフトウェアは、存在しない様です。それらしい変換ツールも見当たりません。
この件の依頼主は、この顧客管理データをなんとかして抜き出したいということなので、費用はかさみますが、データを解析して必要な情報を抜き出すことになりました。ただのファイルコピーの依頼から始まって、データ移行作業の請負いにまで案件が膨らみました。ありがたいことです。
もう1つの依頼の方は、結果的ににあきらめて頂くことになったのですが、そこにたどり着くまでの説得(?)に苦労しました。
こちらの依頼では、変換元は3.5インチFDですが、PC-98用の1.25MBフォーマットのものです。その記録内容を、Windows用のメディアにコピーする依頼として受けたつもりです。
3モード対応のFDドライブがあれば、現行のWindows機でも1.25MBフォーマットされたFDのファイルを扱うことができるのですが、ある程度パソコンに詳しくなければ自分で解決することはできないので、時々この手の依頼があります。
しかし、この依頼主が期待していたのも、FDに入ったデータをWindows環境で閲覧可能にする、という成果でした。
FD変換の依頼を受ける際には、「コピーしたファイルに対応するソフトウェアが無ければ、ファイルの中身を取り扱うことはできません。」という注意書きを添えているのですが、その意味を十分にご理解頂けなかった様です。
このFDの中身が、ただのテキストファイルであればWindowsのメモ帳で開くことができますし、主要なワープロソフトの文書ファイルであれば、不完全とはいえ、WORDで開くことが可能です。表計算やCADのデータでも、互換のあるソフトがあれば、中身を見ることぐらいはできるはずです。
しかし、このFDに記録されているデータは、変換ができる文書ファイルの類いではなく、どうやら、占いかその類いのソフトウェアのデータの様です。
改めて、データの解析および変換の作業として提案をしたのですが、こちらの依頼者は、表示だけでも構わないので、あまり費用はかけたくない、という考えの様です。
そこで「データをコピーしても、そのデータを扱うことができるソフトウェアが無ければ、画面に表示させることさえもできない」ということを、なんとかして理解してもらい、結果としてあきらめてもらうことになったのです。あきらめてもらうという結果のために、時間をかけて説明をするという、割にあわない仕事をしてしまいました。
実際の所「データを扱うにはソフトウェアが必要である」ということを理解していないか忘れてしまっている人が、結構いる様なのです。
WORDの文書データを扱うには、マイクロソフトのWORDというワープロソフト、あるいは、WORDの文書データを読み込み可能な別のソフトウェアが必要です。WORDは、パソコンを購入したときに既にインストールされている場合があるので、ソフトウェアの存在を忘れがちです。
プレーンテキストであっても、メモ帳(notepad.exe)か、その他のテキストエディタが必要です。メモ帳はWindowsに標準で入っていますし、MacOSでも標準でテキストエディットが入っていますので、ソフトウェアが必要だと意識していない人は多いでしょう。
今回の様な、占いのソフトウェアのデータであれば、おそらく、対象者の生年月日や性別等、占の結果を出すために必要な情報を記録したものでしょう。
この様なデータを、人間が読んで理解できる情報として表示するには、記録されている項目とその位置、記録されている値の意味などを解析する必要があります。辞書も無く、文法も知らない言語で書かれた文書を翻訳する様なもので、それはとても困難な作業となるでしょう。
コンピュータのデータは、2進数で表現すれば0と1の羅列であり、その羅列に意味を持たせているのは、ソフトウェアです。
そもそも、コンピュータのデータが0と1の羅列であることを目で見える様にするのでさえ、バイナリエディタ等のソフトウェアが必要なのです。
※実際には、バイナリエディタは、0と1の羅列を8桁毎にまとめて、2桁毎の16進数として表示する。